📖 音楽コラム!

ギターのハーモニクスとは?ナチュラルと人工ハーモニクスの違い

ギター 2026.10.25 公開

ギターを演奏していると、「キーン」という澄んだ鐘のような美しい高音や、エレキギターのソロで「ピキーン」と叫ぶような鋭い金属音を耳にすることがあるはずです。

この独特で魅力的な音を出すテクニックが「ハーモニクス奏法」です。

ハーモニクスは、アコースティックギター、エレキギター、クラシックギターを問わず、楽曲のイントロやエンディング、ソロのハイライトなどで幅広く使われています。
しかし、初心者の方の中には「弦に触れているだけなのに、なぜあんな高い音が出るのか」「ナチュラルハーモニクスと人工ハーモニクスは何が違うのか」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、ハーモニクスの発音原理から、ナチュラルハーモニクスと人工ハーモニクスの明確な違い、各種ハーモニクスの鳴らし方のコツ、うまく鳴らないときの対処法までをプロの視点で徹底解説します。

ハーモニクスをマスターして、ギターの表現力を一段階引き上げましょう。

ギターのハーモニクスとは?音が出る仕組みと倍音の原理

ハーモニクス(Harmonics)とは、日本語で「倍音(ばいおん)」を意味します。

通常のギター演奏では、フレットとフレットの間を指でしっかり指板に押し付けて弦の長さを変え、音程(ドレミ…)をコントロールします。
これに対してハーモニクス奏法は、弦を指板に押し付けず、特定のポイントに軽く触れた状態でピッキングし、澄んだ高い音を響かせる特殊奏法です。

なぜ弦に軽く触れるだけで高い音が出るのか?

ギターの弦を弾くと、弦全体が大きく1つの波として振動します。この弦全体の振動によって鳴るもっとも強く低い音を「基音(きおん)」と呼びます。
私たちが普段耳にしている音の高さ(ピッチ)は、基本的にこの基音の高さです。

しかし、弾かれた弦は全体で大きく揺れるだけでなく、同時に「弦の2分の1」「3分の1」「4分の1」といった細かな単位でも複雑に分割振動しています。
この分割振動によって生じる高い周波数の音が「倍音」です。

通常のピッキングでは基音が圧倒的に大きく響くため、倍音は音色の隠し味としてしか聴こえません。
しかし、弦が振動しない節(ノード)となるポイントに指先を軽く当ててピッキングすると、弦全体の大きな振動(基音)だけがミュートされ、消されずに残った分割振動(倍音)だけが強調されて鳴り響きます。

これがハーモニクスの物理的なメカニズムです。

ナチュラルハーモニクスとは?特徴と基本的な鳴らし方

ナチュラルハーモニクス(自然倍音)とは、左手でフレットを押さえずに「開放弦」の状態を利用して鳴らすハーモニクスです。
ギター本来の弦長(ナットからサドルまで)を基準とした倍音を取り出すため、もっとも基本的でクリアな響きが得られます。

ナチュラルハーモニクスが鳴るフレット位置

ナチュラルハーモニクスは、弦のどこでも均等に鳴るわけではありません。弦の長さが整数比(1/2、1/3、1/4など)で綺麗に分割できるポイントの真上でだけ綺麗に発音します。

代表的な位置は以下のとおりです。

  • 12フレット真上(弦長の1/2):開放弦のちょうど1オクターブ上の音が出ます。もっとも鳴らしやすく、音量も豊かです。
  • 7フレット真上(弦長の1/3):開放弦の1オクターブ+完全5度上の音が出ます(19フレットでも同じ音が出ます)。非常にクリアで抜けの良い音色です。
  • 5フレット真上(弦長の1/4):開放弦の2オクターブ上の音が出ます(24フレット相当の位置でも同様)。弦の振幅が小さくなるため、少し繊細なタッチが必要です。
  • 4フレット・9フレット付近(弦長の1/5):開放弦の2オクターブ+長3度上の音が出ます。ポイントが金属フレットの真上からわずかにずれる場合があり、鳴らす難易度は高くなります。

ナチュラルハーモニクスを綺麗に鳴らす手順とコツ

ナチュラルハーモニクスを美しくサステイン(伸び)豊かに鳴らすには、以下の3つのステップを正確に行うことが重要です。

ステップ1:フレット棒の真上に指を添える
通常のコードや単音を弾くときは「フレットとフレットの間」を押さえますが、ハーモニクスは金属の「フレット棒の真上」に指を置きます。
ミリ単位で位置がずれると音がこもるため、真上を正確に狙いましょう。

ステップ2:指は押さえ込まず、触れる程度にする
指板に弦を押し付けてはいけません。
弦の表面に指先の皮膚がほんの少し触れている程度のフェザータッチを意識します。

ステップ3:弾いた瞬間に左手を弦から離す
右手でピッキングすると同時に、弦に触れていた左指を素早く弦から離します(上にスッと浮かすイメージ)。
指を弦に乗せたままにしておくと、せっかくの倍音振動まで指に吸収されて消音してしまいます。

「触れて、弾いて、すぐ離す」の一連の動作がポイントです。

人工ハーモニクスとは?種類とそれぞれの特徴

ナチュラルハーモニクスは開放弦を利用するため、出せる音程が限られてしまうという弱点があります。
その限界を打ち破り、あらゆる音程でハーモニクスを奏でるために生み出されたのが「人工ハーモニクス(アーティフィシャル・ハーモニクス)」です。

人工ハーモニクスは、左手で任意のフレットを押弦し、その「押さえたフレットからブリッジサドルまでの有効弦長」に対して倍音ポイントを人工的に作り出して発音させます。

人工ハーモニクスには、演奏スタイルやジャンルに応じていくつかのバリエーションが存在します。

1. アーティフィシャル・ハーモニクス(狭義の人工ハーモニクス)

クラシックギター、ソロアコースティックギター、ジャズギターなどで頻繁に使われる、極めて繊細で美しいアプローチです。

左手で通常通りフレットを押さえ、右手の人差し指の腹で「押さえたフレットから12フレット分ブリッジ側のフレット真上」を軽く触れます。
そして、同じ右手の親指や薬指で弦を弾くことで、押弦した音の1オクターブ上のハーモニクスを鳴らします。

両手の役割を右手だけで完結させる高度な技術ですが、これを使えばピアノのように任意のメロディやコード進行すべてをハーモニクス音だけで演奏することが可能になります。

2. ピッキング・ハーモニクス(ピンス・ハーモニクス)

ロックやヘヴィメタルなどのエレキギター演奏において、もっとも有名かつ強烈なハーモニクス奏法です。
ディストーションを深くかけたサウンドでソロの要所に混ぜることで、「ギャイーン」「ピキーン」という叫ぶような倍音を得られます。

ピックを深く短く持ち、ダウンピッキングした直後、ピッキングした親指の側面(親指の腹の外側)を一瞬だけ弦に触れさせて倍音を取り出します。

ピックで弦を弾く動作と、親指の肉が弦に触れる動作をほぼ同時に行うため、慣れるまでは反復練習が必要です。
ピックを当てるブリッジ付近の位置をミリ単位で前後にずらすことで、倍音の音程がダイナミックに変化します。

3. タップ・ハーモニクス

左手でフレットを押弦した状態で、右手の指先(中指や人差し指)の硬い部分を使い、押弦フレットの12フレット上のフレット棒を鋭く叩きつけるようにタップして鳴らす技法です。

叩いた瞬間に指を素早くバウンドさせて離すことで、開放的な倍音がパチーンと響きます。
マイケル・ヘッジスをはじめとするフィンガースタイル・アコースティックギターや、ロックのタッピングソロなどで効果的なアクセントとして多用されます。

ナチュラルハーモニクスと人工ハーモニクスの決定的な違い

どちらも「倍音を抽出して鳴らす」という根本的な原理は同一ですが、実用面や音楽的な用途において明確な違いがあります。

両者の違いを整理して理解しておきましょう。

1. 音程の自由度

ナチュラルハーモニクスは、開放弦の決まったフレット位置(12、7、5フレットなど)でしか鳴らせないため、出せる音程の種類が極めて限定的です。

一方、人工ハーモニクスは左手で任意のフレットを押弦できるため、半音階を含めたすべての音階(ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド)をハーモニクス音で自在に演奏できます。

2. 演奏難易度とフォーム

ナチュラルハーモニクスは左手で軽く触れて右手で弾くだけなので、初心者でも比較的数分の練習で音を鳴らすことができます。

対して人工ハーモニクスは、右手の中で「触れる」と「弾く」を同時に行う(アーティフィシャル)か、ピックと指の肉を同時に当てる(ピッキング)必要があり、細かな指先のコントロールと高い習熟度が求められます。

3. 音色のキャラクターと用途

ナチュラルハーモニクスはオルゴールや鐘のような静寂で澄んだ音色を持ち、アコースティックなバラードの装飾やイントロ、エンディングに最適です。

人工ハーモニクス(特にピッキング・ハーモニクス)は歪みペダルやアンプと組み合わせることで強烈な倍音サステインと倍音バイト感を生み出し、情熱的で攻撃的なソロの表現に向いています。

ハーモニクスがうまく鳴らない時の4つの原因と改善策

「音が詰まってポコッと鳴ってしまう」「倍音のキーンという音が伸びない」と悩む初心者がつまずきやすいポイントと、その解決策をまとめました。

1. 触れる位置がフレット棒の真上からずれている

もっとも多い原因が、位置のずれです。通常の押弦癖がついていると、無意識のうちにフレットとフレットの「中間」に指を置いてしまいがちです。

真上から視線を落とし、金属のフレットワイヤーの真上に指が位置しているかを視覚的に確認してください。

2. 指で弦を押し込みすぎている(ミュートになっている)

指先の力が強すぎると、倍音振動まで指に吸われてしまい、単なる「ブラッシング(ミュート音)」になってしまいます。

弦のたわみが一切生じないくらい、表面のホコリに触れるようなごくわずかな力加減で触れる練習をしましょう。

3. 弾いたあとに指を離すタイミングが遅い

ピッキングした直後に左指が弦に触れたままだと、振動がすぐに止まってしまいます。

ピッキングの「バチン」というヒットと同時に、左手を上方向へスッと逃がすコンマ数秒の連携を意識してください。

4. ピッキング位置がネック側に寄りすぎている

ピッキングする右手の手元がネックに近すぎると、弦のテンションが柔らかすぎて倍音が立ち上がりにくくなります。
特に倍音が出にくい場合は、右手ピッキングの位置をブリッジサドル寄りに近づけてみてください。

ブリッジ付近は倍音成分が豊富に含まれているため、輪郭のくっきりしたハーモニクスが鳴りやすくなります。

実用編:ハーモニクスを活用したギターチューニング法

ハーモニクスは演奏技法としてだけでなく、ギターのチューニング(調律)にも古くから使われています。
中でも「5フレットと7フレットのナチュラルハーモニクス」を共鳴させるチューニング方法は非常に有名です。

  • 6弦の5フレット・ハーモニクス = 5弦の7フレット・ハーモニクス(同じA音)
  • 5弦の5フレット・ハーモニクス = 4弦の7フレット・ハーモニクス(同じD音)
  • 4弦の5フレット・ハーモニクス = 3弦の7フレット・ハーモニクス(同じG音)
  • 6弦の7フレット・ハーモニクス = 2弦の開放弦(同じB音)
  • 5弦の7フレット・ハーモニクス = 1弦の開放弦(同じE音)

ハーモニクスの澄んだ長い伸びを利用することで、2つの音がわずかにずれている時に生じる「ウワンウワン」という音の揺れ(うなり)を聞き取りやすくなります。

耳を使ったチューニング精度を高める訓練としても効果的ですので、ぜひ日常の練習に取り入れてみてください。

まとめ

ギターのハーモニクスは、弦の分割振動から生まれる「倍音」を意図的に取り出す、美しく奥深い演奏技術です。

  • ナチュラルハーモニクス:開放弦の12・7・5フレットなどで鳴らす、鐘のように澄んだ自然倍音。
  • 人工ハーモニクス:押弦して弦長を変え、右手で倍音を発生させることで、自由な音程で倍音を奏でる応用技術。
  • ピッキング・ハーモニクス:エレキギター特有の叫ぶような歪み倍音を生み出すロックの定番技。

まずはもっとも鳴らしやすい「12フレットのナチュラルハーモニクス」から挑戦し、フレットの真上に触れる感覚や、弾いた瞬間に指を離すタイミングを掴んでみましょう。

コツさえ掴めば、あなたのギタープレイに艶やかで多彩な音色の彩りを加えることができるようになります。