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ギターのフレットラップとは?ミュートの仕組みと使いどころ

ギター 2026.10.25 公開

YouTubeやSNSの演奏動画を見ていると、ギターのヘッドやネックの付け根に見慣れない帯のような布製バンドを巻いているギタリストを多く見かけます。「あのパーツは何だろう?」「どんな効果があるのだろう?」と疑問に思ったことがある方も多いのではないでしょうか。

あのアイテムの正体は「フレットラップ(Fretwraps)」と呼ばれる弦楽器用のミュートアクセサリーです。
近年、プロ・アマ問わず多くのプレイヤーが愛用しており、特にテクニカル系のギタリストや宅録(DTM)を嗜むミュージシャンの間では定番ツールとなっています。

本記事では、フレットラップの基本的な仕組みやミュート効果、具体的な使いどころ、装着位置による音の違い、そして使用時の注意点までをプロの視点から徹底的に解説します。

愛器のノイズ対策や演奏クオリティの向上に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

ギターのフレットラップとは?

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フレットラップとは、ギターやベースのネックに巻き付けて使用する、面ファスナー(ベルクロ)付きの帯状アクセサリーです。
パッド部分に柔らかな素材が使われており、弦に程よい圧力をかけて接触させることで、不要な弦振動を抑制(ミュート)する役割を持ちます。

アメリカのブランド「Gruv Gear(グルーブギア)」が開発・発売した製品がパイオニアとして広く知られており、現在ではさまざまなメーカーから同様の製品が登場しています。
エレクトリックギターだけでなく、アコースティックギター、7弦・8弦などの多弦ギター、さらにはエレキベースまで、幅広い弦楽器に対応するサイズが展開されています。

従来の「ヘアゴム」や「リストバンド」との違い

フレットラップが登場する以前から、スタジオミュージシャンやテクニカルギタリストの間では、女性用のヘアゴムやタオル、リストバンドをネックに巻いてノイズを抑える裏技が使われていました。
往年の名ギタリストがヘッドの付け根にヘアゴムを巻き付けている姿を見たことがある方もいるでしょう。

しかし、ヘアゴムやリストバンドには「テンション(締め付けの強さ)を細かく調整できない」「弦への当たり方が均一にならない」「着脱や位置移動に手間がかかる」といった難点がありました。

フレットラップはこれらを解決するために設計された専用ギアであり、ベルクロによって締め付け具合をミリ単位で微調整できるほか、不要なときは素早くヘッド側にスライドさせたり取り外したりできる点が大きなメリットです。

フレットラップの仕組みとミュート効果

フレットラップがもたらす効果の根底にあるのは、「共振の遮断」と「開放弦の振動抑制」です。

具体的にどのような物理的仕組みでノイズが抑えられているのかを見ていきましょう。

1. ヘッド側(ナット裏)の共振ノイズを抑える

ギターの弦は、ナットからブリッジまでの間(スケール部分)だけでなく、ナットからペグポストまでの間にも張られています。
強くピッキングしたり、特定の周波数の音を鳴らしたりした際、このナットとペグの間の弦が勝手に震えて「キーン」「シャーン」といった金属的な倍音ノイズ(共振)を発生させることがあります。

フレットラップをナットのすぐ後ろ(ペグ側)に巻くことで、このヘッド側の余分な振動を完全にダンプ(減衰)できます。
これにより、意図したピュアなピッキング音だけがアンプから出力されるようになります。

2. 開放弦の余計な鳴りを抑える

フレットラップを指板側(1フレット上やナットと1フレットの間)に移動させると、すべての開放弦に対して常にソフトなミュートがかかった状態になります。

これにより、弾いていない弦が他の弦の音に共鳴して勝手に鳴り出してしまう「共鳴ノイズ」や、指が触れた瞬間のタッチノイズを劇的に抑え込むことができます。

フレットラップの主な使いどころとシチュエーション

フレットラップは常時付けっぱなしにするだけでなく、特定の奏法や制作現場において真価を発揮します。

代表的な使いどころを4つ紹介します。

両手タッピング(両手奏法)を行うとき

右手と左手の両方を使って指板を叩く「ツーハンド・タッピング」では、通常のピッキングのように右手の腹(パーム)で低音弦をミュートすることが物理的に難しくなります。
不要な開放弦が鳴ってしまうと音が濁り、フレーズ全体の輪郭が崩れてしまいます。

ここでフレットラップを1フレット付近にセットしておけば、右手を開放弦のミュートから解放でき、複雑なアルペジオやポリリズムのタッピングフレーズもクリアに発音させることが可能になります。

スウィープピッキングや速弾きソロ

流れるように複数の弦を連続して弾くスウィープピッキングでは、鳴らした直後の弦を瞬時にミュートし、単音ずつ分離して響かせることが求められます。
フレットラップを補助的に使うことで、微細なノイズの発生を防ぎ、高速フレーズの一音一音を際立たせることができます。

レコーディング(宅録・DTM)の現場

現代のギタリストにとって最も恩恵が大きいのがレコーディング時です。アンプシミュレーターの進化により、宅録でも極めてハイゲインなサウンドを扱う機会が増えました。
ゲインを高く設定するほど、耳では気づきにくいヘッド側の共振や指が離れた瞬間の僅かなノイズが何倍にも増幅されてしまいます。

ミックス段階で不要な帯域をカットする作業(EQ処理やノイズゲートの調整)を減らすためにも、録音の段階でフレットラップを使って原音をクリーンにしておくことは、プロの現場でも一般的な手法です。

多弦ギターやエレキベースの演奏時

7弦・8弦ギターや5弦・6弦ベースのように弦の数が増えるほど、弾いていない弦をコントロールする難易度は跳ね上がります。
特に太い低音弦はエネルギーが大きいため、高音弦を弾いたときの振動に共鳴しやすく、放置するとボワつきの原因になります。

フレットラップは、多弦楽器の演奏におけるストレスを大幅に軽減してくれます。

フレットラップの正しい装着位置と使い分け

フレットラップは「どこに巻くか」によって効果と演奏性が大きく変化します。

目的に応じて最適な位置を選びましょう。

位置A:ナットの裏(ヘッド側)

【効果】ナット〜ペグ間の共振防止
【演奏への影響】開放弦の鳴りやピッチには一切影響なし

普段から付けっぱなしにしておきたい場合は、この位置が基本です。
コードストロークや開放弦を含むリフを演奏しても通常のギターと変わらないサステインが得られ、かつヘッド裏の耳障りな共振だけをカットできます。

位置B:ナットの上〜1フレット直前

【効果】開放弦のサステインを適度にカット、タイトなサウンドに変化
【演奏への影響】開放弦の伸びが短くなるが、押弦した音には影響が少ない

Djent(ジェント)やモダンメタルなど、ブリッジミュートを用いたタイトなリフを刻む際に適しています。
開放弦の余韻を素早く減衰させることで、スタッカートの効いた歯切れの良いリフワークが可能になります。

位置C:指板上(1〜2フレット付近)

【効果】強力なミュート、すべての開放弦ノイズを遮断
【演奏への影響】開放弦の音が完全にミュートされるため、ポジション移動を伴うソロ専用

タッピングソロやハイポジションでのテクニカルプレイに特化したセッティングです。
開放弦は実質的に使えなくなるため、曲の構成に合わせてイントロやバッキングではヘッド側へ待避させ、ソロの直前に指板上へスライドさせるといった工夫が必要です。

使用時の注意点とデメリット

非常に便利なフレットラップですが、万能の魔法の道具ではありません。

導入する前に知っておくべき注意点も存在します。

開放弦を使ったフレーズが制限される

指板上にフレットラップを巻いている間は、開放弦を綺麗に鳴らすことができません。
ローコード(オープンコード)の演奏や、開放弦をペダルトーン(持続音)として使うアルペジオなどは音が詰まってしまうため、曲中で使い分ける必要があります。

締め付けすぎによるピッチ(音程)のズレ

フレットラップのベルクロを強く締めすぎると、パッドが弦を上からフレットに押し付けてしまい、チューニングがシャープ(音程が高くなる)してしまうことがあります。
装着後は軽く弦に触れる程度の強さに調整し、チューナーでピッチが狂っていないか確認する習慣をつけましょう。

基礎的なミュート技術の向上が遅れるリスク

特にギター初心者の場合、最初からフレットラップに頼りすぎてしまうと、右手や左手による「自力でのミュート技術」が身につかなくなる恐れがあります。

ギター演奏において、弾いていない弦を自然に指で触れて消音する技術はあらゆる場面で不可欠です。
あくまで「テクニックを補佐する補助輪」または「レコーディングの精度を高める機材」として捉えるのが健全です。

ヴィンテージギター等の塗装への影響

フレットラップの素材やゴム部分に含まれる可塑剤(かそざい)が、ニトロセルロース・ラッカー塗装と反応して変色や塗装面の軟化を引き起こすケースが稀にあります。

ポリウレタン塗装の一般的なギターであれば問題ありませんが、デリケートなラッカー塗装のギターに長期間つけっぱなしで保管することは避けたほうが無難です。

フレットラップのサイズ選びの目安

フレットラップを購入する際は、自分の楽器に合った正しいサイズを選ぶことが重要です。

サイズが小さすぎるとベルクロが届かず、大きすぎると余った布が演奏の邪魔になってしまいます。

  • SM(スモール):一般的な6弦エレキギター、アコースティックギター、4弦エレキベース、ウクレレなど
  • MD(ミディアム):7弦エレキギター、クラシックギター、5弦エレキベースなど
  • LG(ラージ):8弦エレキギター、6弦エレキベースなど
  • XL(エクストララージ):9弦以上の多弦ギター、7弦以上の多弦ベース、ダブルベース(コントラバス)など

スタンダードな6弦ギターであれば「SMサイズ」を選べば間違いありません。
ご自身のギターのネック幅に合わせて適切なモデルを選びましょう。

まとめ

ギターのフレットラップは、余計な弦の共鳴やタッチノイズを抑え、演奏の輪郭をクリアにするための極めて実用的なツールです。

ヘッド側に装着して不要な倍音ノイズをカットする普段使いから、指板上に移動させて両手タッピングやスウィープを極限までクリーンに決める飛び道具的な使い方まで、1つ持っておくだけで幅広いシチュエーションに対応できます。

自力でのミュート技術を磨くことは大前提ですが、プロのレコーディング現場でも一般的に活用されているように、クオリティを高めるための手段として文明の利器を取り入れるのは賢い選択です。

自宅録音のサウンドをワングレード引き上げたい方や、テクニカルなフレーズに挑戦している方は、ぜひフレットラップを試してみてはいかがでしょうか。

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