DTMで楽曲制作をしていると、「ローカット」「ハイカット」という言葉を頻繁に耳にしますよね。
これらはイコライザー(EQ)を使った基本的な音響処理の一つであり、プロの楽曲には必ずと言っていいほど施されています。
しかし、初心者の方の中には、「なんとなく削っているけれど、本当に必要なの?」「どれくらい削ればいいのかわからない」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、DTMにおけるローカットとハイカットの基本から、使う目的、具体的な設定のコツ、そして注意すべきポイントまで詳しく解説します。
正しく理解して、ミックスのクオリティをワンランク上のものに引き上げましょう。
ローカット・ハイカットとは?基本を解説

ローカットとハイカットは、音の不要な周波数帯域を削るためのEQ(イコライザー)の機能です。
まずはそれぞれの基本的な仕組みと、別の呼び方について押さえておきましょう。
ローカット(ハイパスフィルター)の仕組み
ローカットとは、その名の通り「低音域をカットする」機能です。専門用語では「ハイパスフィルター(HPF:High-Pass Filter)」とも呼ばれます。
高音(High)はそのまま通過させ(Pass)、設定した周波数よりも低い帯域を減衰させる仕組みになっています。
人間の耳には聞こえにくい超低音や、楽曲全体を濁らせる原因となる低音をすっきりと取り除くために使用されます。
ハイカット(ローパスフィルター)の仕組み
ハイカットとは、「高音域をカットする」機能です。こちらは「ローパスフィルター(LPF:Low-Pass Filter)」と呼ばれます。
低音(Low)を通過させ(Pass)、設定した周波数よりも高い帯域を削るのが特徴です。
耳障りな高音のノイズを抑えたり、音が前に出すぎるのを防いで奥に引っ込めたりする際に重宝します。
DTMでローカット・ハイカットを使う目的
なぜDTMにおいてローカットとハイカットが必要なのでしょうか。主な目的は以下の3つに集約されます。
これらを理解することで、EQ操作の意図が明確になります。
1. 不要な低音・高音を削ってヘッドルームを確保する
楽曲の中には、人間には聞こえないような超低音や、不要な高音成分が含まれていることがよくあります。
これらはスピーカーやヘッドホンを無駄に駆動させ、全体の音量(ヘッドルーム)を圧迫する原因になります。
ローカットやハイカットで不要な部分をあらかじめ削っておくことで、マスター出力に余裕が生まれ、結果として全体をクリアで大きな音圧に仕上げやすくなります。
2. 楽器同士の音のぶつかり(マスク現象)を防ぐ
DTMでは、ボーカル、ギター、ピアノ、シンセサイザーなど、多くの楽器を同時に鳴らします。
それぞれの楽器が同じ周波数帯域を持っていると、音が重なり合って互いの輪郭がぼやけてしまう「マスク現象」が発生します。
例えば、ボーカルのトラックに不要な低音が含まれていると、キックやベースの低音とぶつかってしまいます。
ボーカルのローカットを適切に行うことで、キックやベースの居場所を確保し、ミックス全体の分離感を高めることができます。
3. ミックス全体の濁りを取り除きクリアにする
各トラックで「なんとなくモワッとする」「すっきりしない」と感じる場合、その多くは不要な低音の溜まり場が原因です。
ローカットを入れるだけで、驚くほど音がクリアになり、プロっぽい抜けの良いサウンドに近づきます。
楽器別のローカット・ハイカットの目安
「具体的にどのあたりを削ればいいの?」という疑問を持つ方に向けて、主要な楽器ごとの一般的な目安を紹介します。
ただし、これはあくまで目安であり、楽曲のキーやアレンジによって調整が必要です。
ボーカルの処理
ボーカルは、キックやベースと低音がぶつかりやすいため、ローカットがほぼ必須です。
80Hz〜100Hzあたりをローカットのターゲットにすることが多いです。
男性ボーカルか女性ボーカルか、声の太さによって調整しましょう。
高音域に関しては、耳障りな「サー」というノイズや刺さる高音がある場合、15kHz〜20kHzあたりでハイカットを軽く入れることがあります。
ギター・ピアノの処理
アコースティックギターやエレキギター、ピアノなどの和音楽器は、低音成分が多すぎると低音域が濁ります。
アコースティックギターであれば100Hz〜150Hzあたりまでローカットを入れることで、ベースとの住み分けがうまくいきます。
また、他の楽器の邪魔になる高音を整理するために、ハイカットを10kHz〜12kHzあたりにかけることも有効です。
キック・ベースの処理
低音の主役であるキックとベースですが、これらにもローカットが必要な場合があります。
例えば、キックの超低音(30Hz以下)や、ベースの超低音は、サブウーファー以外の環境では再生されず、音圧を下げる原因になります。
30Hz以下の帯域をスローなスロープでローカットすることで、低音の締まりが良くなります。
ローカット・ハイカットを使う際の注意点
ローカットやハイカットは非常に便利な反面、使い方を誤ると楽曲の魅力を損なってしまうことがあります。
以下の注意点に気をつけながら作業を行いましょう。
ソロで聴かずに全体の中で判断する
特定のトラックだけをソロ(単体)で聴いて、「もっとすっきりさせよう」とローカットを深くかけすぎてしまう失敗がよくあります。
単体では「細くて頼りない音」に聞こえても、オケ(全体)に混ぜるとちょうど良く馴染むことが多々あります。
必ず曲全体を再生しながら、バランスを確認してカットする周波数を決めるようにしましょう。
削りすぎて音のスカスカ感・違和感を出さない
必要以上にローカットやハイカットをかけると、楽器本来の「太さ」「温かみ」「空気感」が失われてしまいます。
例えば、アコースティックギターのローを削りすぎると、ペラペラの軽い音になってしまいます。
「音が細くなったな」と感じたら、削りすぎのサインです。
フィルターの周波数を少し下げて、音の厚みを残すように調整してください。
スロープ(傾き)の設定に気を付ける
EQのフィルターには、「スロープ(dB/oct)」という、どれくらいの急しさで削るかを決める設定があります。
一般的には「12dB/oct」や「24dB/oct」が使われます。
スロープを急(36dB/octや48dB/octなど)にしすぎると、フィルターの境界線付近で位相の歪み(レゾナンスの発生など)が生じ、不自然な音の変化が起こることがあります。
特別な理由がない限りは、緩やかなスロープから試すのが無難です。
まとめ
今回は、DTMにおけるローカット・ハイカットの目的と注意点について解説しました。
記事の重要なポイントを振り返ってみましょう。
- ローカットは低音を削り(ハイパス)、ハイカットは高音を削る(ローパス)機能である
- 主な目的は「ヘッドルームの確保」「楽器同士のぶつかり防止」「全体の濁り解消」である
- 楽器によって適切な目安はあるが、必ず曲全体(オケ)の中で判断する
- 削りすぎると音の太さや温かみが失われるため注意が必要である
ローカットとハイカットは、ミックスの土台を整えるための基本中の基本のテクニックです。
今までなんとなく設定していた方も、今回紹介した目的や注意点を意識しながら使ってみることで、ミックスのクリアさが劇的に変わるはずです。ぜひ今日の制作から試してみてください。

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