現代のヘヴィメタルやDjent、プログレッシブ・メタルなどの制作において、重厚でタイトなギターサウンドは楽曲の要です。
しかし、生演奏のレコーディング環境を整えるのが難しい場合や、超低音域をカバーする多弦ギターを所有していない場合、打ち込み音源のクオリティが制作全体の完成度を大きく左右します。
そうしたメタルギタリストやDTMerのニーズに応える強力なプラグイン音源が、Ample Sound社が開発した「AMPLE METAL HELLRAZER(AMH)」です。
本記事では、AMPLE METAL HELLRAZERの基本スペックから特徴的な機能、リアルな演奏を再現するための打ち込みテクニック、活用が適しているジャンルまで詳しく解説します。
Ample Sound AMPLE METAL HELLRAZERとは?概要と開発背景

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AMPLE METAL HELLRAZER(以下、AMH)は、リアルなアコースティック/エレクトリック楽器音源で高い評価を得ているAmple Sound社がリリースした、メタル特化型のエレクトリックギター音源です。
AMHの最大の特徴は、実在する9弦エレキギター「Schecter Hellraiser C-9」をサンプリングしている点にあります。
一般的な6弦ギター音源はもちろん、7弦・8弦音源をもしのぐ圧倒的な超低音域をカバーしており、現代のエクストリーム・メタルやモダンヘヴィネスサウンドを意図通りに具現化するために設計されています。
実機「Schecter Hellraiser C-9」をサンプリング
サンプリング元となったSchecter Hellraiser C-9は、マホガニーボディにEMG製アクティブピックアップを搭載したモダンメタルの代表格的な多弦モデルです。
AMHでは、このギターの生々しいトーンを高解像度で丁寧にサンプリングしています。
ドライサウンド(ライン録音)の音質が非常にクリーンかつ芯が太いため、アンプシミュレーターを通した際にも低音が潰れず、明瞭なアタック感を維持できるのが強みです。
対応チューニングと音域の広さ
AMHの標準チューニングは「#C, #F, B, E, A, D, G, B, E」(低音弦側からC#0〜E4)に設定されています。
最低音が通常の6弦ギター(E2)よりも1オクターブ半以上低いC#0まで到達するため、ベースの帯域と重なるような極太のダウンチューニングリフも難なく再現可能です。
さらにインストゥルメント内でのチューニング調整にも対応しており、ドロップチューニングなどの特殊な設定にも柔軟に適応します。
AMPLE METAL HELLRAZERの主な特徴と搭載機能
AMHは単に低音が出るだけの音源ではありません。
細かなニュアンスや演奏性を再現するための先進的なシステムが多数盛り込まれています。ここでは、特に注目すべき機能を見ていきましょう。
多彩なアーティキュレーション(奏法)
メタルギターの打ち込みにおいて、リフに躍動感を与えるためには奏法の切り替えが欠かせません。
AMHには、以下のような実用的なアーティキュレーションが網羅されています。
- サステイン(Sustain)
- パームミュート(Palm Mute)
- ミュート(Mute)
- ナチュラルハーモニクス(Natural Harmonic)
- ピッキングハーモニクス(Artificial Harmonic)
- ハンマリングオン/プリングオフ(Hammer-On & Pull-Off)
- レガートスライド(Legato Slide)
- スライドイン/スライドアウト(Slide In & Out)
- ポッピング・スラップ(Popping)
特にパームミュートはベロシティによってミュートの深さが無段階に変化するように設計されており、激しい刻みから緩やかなミュートへのグラデーションを自然に表現できます。
また、Djent系の演奏で多用されるスラップ/ポップ奏法も収録されているため、パーカッシブな現代的リフの打ち込みにも最適です。
メタルリフ制作を強力に支援する「Riffer」機能
Ample Sound製品共通の強みである「Riffer(リファー)」機能は、プラグイン内部に搭載された専用のMIDIシーケンサーです。
一般的なDAWのピアノロールでは打ち込みに手間がかかる複雑なピッキング方向、フレット位置の指定、アーティキュレーションの組み合わせなどを、直感的なインターフェースで素早く構築できます。
作成したリフはDAWのトラックへMIDIデータとしてドラッグ&ドロップできるため、作業効率を大幅に向上させます。また、多数のプリセットリフも収録されており、リフ作りのアイデア出しとしても有用です。
内蔵アンプシステムとFXプロセッサー
AMHの内部には、メタルに特化したハイゲインアンプやキャビネットIR、各種ストンプボックス(オーバードライブ、コンプレッサー、EQ、ディレイ、リバーブなど)が統合されています。
外部のアンプシミュレータープラグインを立ち上げることなく、AMH単体で迫力ある歪みサウンドを作り込めるため、プラグインの読み込みやPCへの負荷を抑えながら素早くラフミックスを作成したい場合にも便利です。
もちろん、内蔵アンプを完全にバイパスしてライン出力にし、お気に入りのアンプシミュレーターを通すことも可能です。
弦とフレットの自動最適化ロジック
ギターは同じ音高であっても、異なる弦の異なるフレットで演奏することができます。
AMHには高度な運指ロジックが組み込まれており、入力された音符の流れを解析して、実際のギタリストが押さえるような自然な弦とポジションを自動で選択します。
必要に応じてキースイッチで特定の弦を強制指定することも可能です。
AMPLE METAL HELLRAZERでリアルなサウンドを作る打ち込みのコツ
高品質なサンプリング音源であっても、ベタ打ちのままではどうしても「打ち込み感」が残ってしまいます。
AMHのポテンシャルを最大限に引き出すための実践的なポイントを紹介します。
1. オルタネイトピッキングの再現
高速なリフを刻む際、ダウンピッキングとアップピッキングの音色差を意識することが重要です。AMHはキースイッチや自動サイクルによってピッキング方向を制御できます。
すべてをダウンピッキングにしてソリッドな質感を出すアプローチと、オルタネイトピッキングで適度な揺らぎを与えるアプローチをリフのテンポや曲調に応じて使い分けましょう。
2. パームミュートのベロシティ管理
メタルのリフで最も重要なのがパームミュートの強弱です。
すべてのノートをベロシティ127で打ち込んでしまうと、平坦で機械的な印象になってしまいます。
小節の頭やアクセントを置きたい拍のベロシティを上げ、拍と拍の間は少し落とすなど、波をつけることで生演奏特有のグルーヴ感が生まれます。
3. 左右のダブルトラッキング設定
現代のメタルプロダクションでは、ギターを左右に完全にパンニングする「ダブルトラッキング」が基本です。
AMHを2トラック用意し、同じMIDIデータをそのまま左右に振るだけでは、位相の問題(フェイジング)が発生して音が細くなってしまいます。
左右でわずかにタイミングやベロシティをズラすか、AMHのサンプルランダマイズ機能、あるいはピッキング設定をトラックごとに変更することで、実際に2回演奏したかのような立体的なワイド感を得られます。
他のメタルギター音源との違いと使い分け
メタル向けギター音源市場には、様々なメーカーから特色ある製品がリリースされています。
その中でAMHがどのような立ち位置にあるのか、同社の他製品や他社音源と比較してみましょう。
Ample Metal Eclipse(AME)との違い
同じAmple Soundのメタルシリーズとして有名な「Ample Metal Eclipse(AME)」は、ESPの6弦ギターをサンプリングしたモデルです。
AMEはクラシックなヘヴィメタルやスラッシュメタル、メロディック・スピードメタルなど、スタンダードな音域でのリードやリフに適しています。
一方で、AMHは前述の通り9弦ギターをベースにしているため、圧倒的な低音域を必要とするモダンメタルやプログレッシブ・メタル、ニューメタルなどに特化しています。
制作する音楽ジャンルの年代感やチューニング帯域によって明確に棲み分けが可能です。
他社8弦・多弦音源との違い
市場には8弦ギターをベースにしたメタル音源もいくつか存在します。
AMHのアドバンテージは「9弦」という規格外の音域の広さに加え、Riffer機能による打ち込み補助機能の使いやすさ、そしてライン音の素直さにあります。
特に、自身でお気に入りのアンプシミュレーター(Neural DSP製品やLine 6 Helix Nativeなど)を組み合わせて音作りを追い込みたいクリエイターにとって、色付けの少ないクリーンなサンプリングは非常に扱いやすい仕様です。
AMPLE METAL HELLRAZERが適している制作環境とジャンル
AMHの特性が特に活きる用途やシチュエーションは以下の通りです。
- Djent/プログレッシブ・メタル:複雑なポリリズムと超低音のミュートリフを正確に刻みたい場合。
- デスコア/メタルコア:ブレイクダウン時に地響きのような重低音ギターサウンドを配置したい場合。
- ゲーム・アニメ・劇伴のバトル曲:生演奏を手配する時間がない締め切りの中で、即戦力のヘヴィリフを素早く構築したい場合。
- ギタリストのプリプロ・作曲支援:多弦ギターを所持していないギタリストが、9弦の音域を取り入れた楽曲のデモを制作する場合。
まとめ
Ample Soundの「AMPLE METAL HELLRAZER」は、Schecterの9弦ギターを忠実にサンプリングした、ヘヴィメタル・モダンヘヴィネス特化型のエレクトリックギター音源です。
9弦仕様による圧倒的な低音域カバー力、パームミュートやスラップを含む充実したアーティキュレーション、そしてリフ制作を効率化するRiffer機能など、現代のメタルプロダクションに必要な要素が高いレベルで凝縮されています。
「既存の6弦・7弦音源では低音の太さやアタック感が足りない」「Djentのようなタイトで重厚な刻みを打ち込みで再現したい」と感じているDTMerにとって、楽曲のボトムを支える強力な選択肢となるプラグインです。

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