エレキギターやエレキベースのカスタマイズにおいて、「ピックアップの交換」や「コンデンサーの変更」は定番とされています。
しかし、一歩踏み込んだマニアックなチューンナップとして注目されるのが「内部配線材の交換」です。
「たかが数十センチの細い線を変えるだけで、本当にギターの音が変わるのだろうか?」と疑問に思う方も多いでしょう。結論から言うと、配線材によってギターの音質や音の伝達効率は確実に変化します。
本記事では、ギターの内部配線材が音に与える影響や、代表的な配線材の種類と特徴、交換時の注意点やポイントを分かりやすく解説します。
ギターの内部配線材で音は変わるのか?
エレキギターの内部配線材を変更すると、音の「レンジ感」「音の立ち上がり(レスポンス)」「解像度」「高域の抜け方」などが変化します。
ただし、ピックアップを交換したときのように「まるで別のギターになった」と感じるほどの劇的な変化ではありません。
配線材による変化は、例えるなら「くすんでいた音の視界がクリアになる」「ギターが本来持っているポテンシャルが引き出される」といった質の変化です。
エレキギターのピックアップで発生した電気信号は、非常に微弱なハイインピーダンス信号です。
この微弱な信号がポット、スイッチ、ジャックへと渡る過程で、配線材の抵抗や容量成分(キャパシタンス)によって信号の損失(伝送ロス)が生じます。
質の高い配線材や音質特性に優れ線材に交換することで、この伝送ロスを減らし、狙った音色へチューニングすることが可能になります。
代表的な配線材の種類とサウンド特性
ギターに使われる配線材にはいくつかの種類があり、使用されている導体の材質(銅、銀メッキなど)や被覆(絶縁体)の素材によって音が異なります。ここでは代表的な配線材を紹介します。
1. クロスワイヤー(Cloth Wire / 布巻き線)

ヴィンテージのフェンダーやギブソンにも使用されていた、綿などの布で被覆された伝統的な配線材です。
ハンダ付けの際に被覆を剥く必要がなく、後ろに押し出すだけで作業できる利便性もあります。
サウンドはオーガニックで温かみがあり、ミッドレンジ(中音域)に心地よい押し出し感が出ます。
太くまとまりのあるヴィンテージトーンを目指す方に最もおすすめの配線材です。
2. PVC(塩ビ)被覆線(BELDEN 8503など)

現代の多くのギターで標準採用されている、ビニール被覆の配線材です。
中でも「BELDEN(ベルデン)8503」はアップグレード用配線材の金字塔として知られています。
BELDEN 8503に交換すると、音圧感と解像度が高まり、音が前にドカンと出るパワフルなサウンドになります。ロックやポップス、モダンなジャンルで抜けの良い音を作りたい場合に最適です。
3. テフロン被覆・銀メッキ線
絶縁性能が高いテフロンを被覆に使用し、導体に銀メッキを施した高機能な配線材です。
非常にワイドレンジで、高音域のレンジが広がりクリアな透明感を得られます。
音の立ち上がりが非常に早くなるため、テクニカル系ギタリストや、ソロワークで一音一音を明瞭に発音させたいプレイヤーに向いています。
4. 線材の太さ(AWG規格)による変化
配線材を選ぶ際は、太さ(AWGという単位で表記)にも注目しましょう。
数字が小さいほど線が太くなります。
- AWG22(標準的な太さ): 音のバランスが良く、取り回しも容易。ギター配線で最も一般的に使われます。
- AWG20(やや太め): 低音域の押し出しや音圧が増しやすくなりますが、線が固くなりキャビティ内での取り回しが難しくなります。
- AWG24(細め): スッキリとしたタイトな音色になりやすいですが、低域の力強さはやや控えめになります。
配線材を交換するメリットとデメリット
配線材の交換には多くのメリットがありますが、注意すべき点もあります。
交換するメリット
- 音の抜け・解像度の向上: 工場出荷時の安価な配線材から高品質な配線材に変えることで、音が引き締まりバンド内で埋もれにくくなります。
- ノイズの軽減: 劣化して脆くなった配線や不適切な取り回しをやり直すことで、不快なノイズを軽減できます。
- 耐久性と信頼性の向上: ハンダ付けをやり直すことで、ライブ中の断線や接触不良といったトラブルを防ぐことができます。
交換するデメリット・注意点
- ハンダ付けの技術が必要: 不慣れなハンダ付けは、加熱しすぎによるポットやスイッチの破損、イモハンダ(接触不良)の原因になります。
- 高域が出すぎて音が耳痛くなるリスク: 解像度が高くなりすぎた結果、「高音がキンキンして聴き疲れする」と感じる場合もあります。
- オリジナル価値の低下: ヴィンテージギターなどの場合、オリジナルの配線を変更すると中古市場での価値が下がることがあります。
初心者でも失敗しない配線材交換のポイント
自分で内部配線の交換にチャレンジする際は、以下のポイントを押さえて作業を進めましょう。
1. 適切な工具とハンダを用意する
ギター内部のパーツ(特にポットの背面など)は熱を逃がしやすいため、30W〜40W程度の十分なワット数があるハンダごてを用意します。

温度調整機能付きのものが理想的です。
また、使用するハンダも音質に影響を与えます。
定番の「KESTER 44(ケスター44)」は、適度な粘りと力強い中低域が得られるため、ギター配線用として非常におすすめです。
2. 元の配線状態を写真に残しておく
作業を始める前に、必ずピックガード裏やコントロールキャビティ内の状態をスマホなどで多角度から撮影しておきましょう。
どの端子にどの色の線が繋がっていたかが分からなくなると、音が鳴らなくなった際に原因の特定が困難になります。
3. 一度に全部外さず、1本ずつ交換する
配線作業に慣れていない場合は、すべての線を一度に外してしまうのではなく、「1本の線を外したら、新しい配線材を同じ場所にハンダ付けする」という手順を繰り返すのが確実です。
まとめ
ギターの内部配線材を変えることで、音の解像度やレスポンス、帯域のバランスは明確に変化します。
配線材ごとの特徴をまとめると以下の通りです。
- 温かみのあるヴィンテージトーン: クロスワイヤー
- パワフルで音抜けの良さを求める: BELDEN 8503(PVC線)
- クリアで立ち上がりの早い現代的な音: テフロン被覆・銀メッキ線
配線材の交換は、パーツ代自体は数百円〜数千円程度と非常にリーズナブルでありながら、ギターのポテンシャルを大きく引き出せる非常にコストパフォーマンスの高いカスタマイズです。
自分のギターの音に「もう少し抜けが欲しい」「もう少し太さが欲しい」と感じている方は、ぜひ配線材の交換に挑戦して、自分理想のサウンドを追求してみてください。