ギターをチューナーできちんとチューニングしたはずなのに、コードを鳴らすと響きが濁ったり、ハイポジションでソロを弾くと音程が外れて聴こえたりした経験はないでしょうか。
その原因の多くは、「オクターブチューニング」のズレにあります。
オクターブチューニングは、ギター全体のピッチ(音程)の正確さを保つために欠かせない基本的なセットアップです。
初心者にとっては難しそうに見えるかもしれませんが、仕組みと手順さえ理解すれば、自宅で自分で調整できます。
本記事では、オクターブチューニングの基礎知識から、音程が狂ってしまう原因、具体的な調整手順やコツまで分かりやすく解説します。
ギターのオクターブチューニングとは?
オクターブチューニングとは、ギターの「開放弦の音」と「12フレットを押弦したときの音」の音程差をなくし、ギター全体のピッチを均一に揃える作業のことです。
音楽理論上、12フレットは開放弦のちょうど1オクターブ上の音になります。
ギターの設計上、ナット(ネックの根元)から12フレットまでの距離と、12フレットからブリッジサドルまでの距離は理論上は同じになります。
しかし、実際に弦を押さえてフレットに密着させると弦がわずかに引っ張られて張力(テンション)が高くなり、音程がシャープ(高く)してしまいます。
この押弦による音程のズレを解消するために、ブリッジサドルの位置を前後に動かして弦の有効長(スケール)を微調整する作業が「オクターブチューニング(オクターブ調整)」です。
これを行うことで、ローポジションからハイポジションまで濁りのないクリアな和音と正しい音程で演奏できるようになります。
オクターブチューニングがずれる4つの原因
一度しっかり合わせたはずのオクターブチューニングも、時間の経過や環境の変化によって徐々にずれていきます。
主な原因は以下の4点です。
1. 弦の劣化や摩耗
弦が古くなると、手垢やサビが付着したり、フレットとの摩擦で弦の一部が細くなったりして、弦全体の質量バランスが不均一になります。
質量が均一でなくなった弦は正しい振動ができず、ピッチが不安定になってオクターブが狂う直接の原因になります。
2. 弦のゲージ(太さ)やブランドの変更
弦の太さ(ゲージ)を変えると、弦の張力や芯線の太さが変わるため、適切なサドル位置も変化します。
例えば、ライトゲージ(09-42)からレギュラーゲージ(10-46)に変更しただけでも、オクターブ調整は必須となります。
同じゲージであっても、メーカーや芯線の構造(ラウンドコア、ヘックスコア)が変われば微調整が必要になることがあります。
3. ネックの反りや弦高の変化
木材で作られているギターのネックは、季節ごとの湿度や温度の変化によって「順反り」や「逆反り」を起こします。
ネックが反ると弦高(フレットと弦の隙間)が変わり、押弦時に弦が引っ張られる量が変わるため、オクターブピッチがずれてしまいます。
4. フレットの摩耗
長年演奏していると、よく使うポジションのフレット頂点が削れて平らになっていきます。
フレットの頂点がずれると実質的なスケール長が変わるため、特定のフレットだけピッチが合わなくなる現象が起きます。
オクターブチューニングの調整手順
一般的なエレキギター(ストラトキャスターやレスポールなど)を例に、具体的な調整手順を解説します。
準備するもの
- 高精度なチューナー:ペダル型チューナーやクリップチューナーでも可能ですが、±0.1セント単位など測定精度の高いストロボモード搭載チューナーが理想的です。
- 工具:ブリッジサドルを動かすためのプラスドライバー、マイナスドライバー、または六角レンチ(ギターのブリッジタイプに合ったもの)。
- 新しい弦:古い弦のまま調整しても意味がないため、必ず新品の弦を張って十分に伸ばした状態で行います。

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ステップ1:ギターの基本状態を整える
オクターブ調整を始める前に、ネックの反りと弦高を自分の好みの状態にセットアップしておきます。
ネック調整や弦高調整を行うとオクターブピッチが必ず変わるため、「ネック調整 → 弦高調整 → オクターブ調整」の順序を守ることが大切です。
ステップ2:開放弦を正確にチューニングする
まず、対象の弦の開放弦を正確に合わせます。ギターは普段演奏する姿勢(構えた状態)でチューニングしてください。膝の上に寝かせた状態で合わせると、重力によってネックのしなり方が変わり、構えたときにピッチがずれてしまいます。
ステップ3:12フレットの音程をチェックする
次に、同じ弦の12フレットを普段演奏するのと同じ適度な力加減で押さえ、ピッキングして音程を確認します。
このとき、強く押さえすぎるとそれだけでピッチが高くなってしまうため、余計な力を入れないよう注意してください。
※より正確にチェックするため、12フレット上の「ハーモニクス音」と「実音(押弦音)」を比較する方法も有効です。
ステップ4:サドルの位置を前後に調整する

開放弦のピッチと12フレット押弦時のピッチを比較し、チューナーの針の動きに合わせてサドルを動かします。
- 12フレットの音が「高い(シャープ)」場合:サドルをボディ後方(ネックから遠ざかる方向)へ移動させます。弦の長さを伸ばすことで音程を下げます。
- 12フレットの音が「低い(フラット)」場合:サドルをネック側(ヘッドに近づく方向)へ移動させます。弦の長さを短くすることで音程を上げます。
「高いときは遠くへ、低いときは近くへ」と覚えると迷いません。
サドルを動かしたら開放弦のピッチがズレるため、必ず「開放弦をチューニングし直す → 再び12フレットを確認する」という作業を一致するまで繰り返します。これを1弦から6弦まで順番に行います。
アコースティックギターのオクターブ調整はどうする?

エレキギターとは異なり、アコースティックギターやクラシックギターの多くはブリッジサドルが1本の牛骨やプラスチックのパーツで固定されており、ネジで個別に動かすことができません。
アコースティックギターでオクターブが合わない場合は、ネックの反りをトラスロッドで適正に戻すか、サドルの頂点をヤスリで削って弦の接触点をずらす加工が必要になります。
サドルの切削加工は取り返しがつかない作業となるため、大きく狂っている場合はリペアショップや専門工房に相談することをおすすめします。
オクターブ調整を成功させる3つのコツ
作業自体は単純ですが、より高い精度で仕上げるためのコツを押さえておきましょう。
- ピックアップの高さを下げる:特にストラトキャスターなどのシングルコイルピックアップは磁力が強いため、弦に近づきすぎていると磁力で弦の振動が引っ張られ、ピッチが不規則に揺れる「ストラト病」が起こります。調整時はピックアップを少し下げておくと安定します。
- ピッキングの強さを一定にする:強く弾きすぎるとアタックの瞬間だけピッチが高くなります。普段の演奏時のアタック感を意識し、音が伸びている安定したタイミングでチューナーの表示を読み取りましょう。
- ドライバーの取り扱いに注意する:サドル調整ネジを回す際、ドライバーの先端がギターのトップ面やブリッジに当たって傷をつけないよう、クロスを敷くなどして保護しながら慎重に回してください。
まとめ
オクターブチューニングは、ギターが本来持っている豊かな響きと正確なハーモニーを引き出すための最も重要なメンテナンスのひとつです。
「弦交換をしたとき」「季節の変わり目で気候が変わったとき」「ハイポジションの和音に違和感を覚えたとき」は、ぜひオクターブチューニングをチェックしてみてください。
一度自分でやり方を覚えてしまえば、いつでも愛器をベストなコンディションに保つことができ、日々の演奏やレコーディングのクオリティが大きく向上します。